一歩一歩、着実な歩みを
学参デザイン・組版・図版クリエイター

第26回 母からの最後のプレゼント

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今春3月14日、母が91歳で旅立ちました。
昨年3月6日から径鼻栄養のまま、入院から1年で亡くなりました。
母の看取りは想像以上に疲れ、いいようのない脱力感に襲われましたが
ようやく普段の生活に戻りつつあります。

看病は時間に縛られ、辛く厳しいものですが、思いがけず楽しみを貰いました。
市内の病院にいたので、毎日通うのに困って電動自転車を購入しました。
63歳で50年ぶり位に自転車に乗る事になり、最初は怖くて早く走れませんでしたが
だんだんに上手になり、桜並木の美しい太田川の土手沿いや猿猴川の土手沿いなど
走りやすいコースを見つけ毎日病院に通いました。

母の看守りに行っても、言葉も少なく意志表示もあまりないので
ただ背中や手足を摩ること位しかできません。
40分位いるともうすることがなく、看護士さんにお願いして帰るしかありません。

来た道を自転車で帰るのですが、この一年、春、夏、秋、冬の季節の桜並木の
移り変わりを時に涙をにじませながら、時にこころ弾ませながら見てきました。
辛い気持ちを四季折々の桜並木に慰められました。

仕事がら座ったまま長時間パソコンに向かっているので、肩こりや足のむくみに悩まされ
イライラや食欲不振や暴飲暴食をしたり、健康的な生活が出来にくい状態です。
毎日1時間、自転車で病院までの往復で、体力がつき少しお腹も小さくなり、
気分転換もでき、とても楽しみな病院通いとなりました。

もしも、母が倒れなかったら自転車に乗ることは無かったと思います。
母の事が心配で、どうしてもほって置けないので、見舞いに行きたい
そう思う強い気持ちがあったからです。

今では、ほとんどの外出を自転車で行きます。市内まで30分ぐらい。
気付かなかったお店や、新しい発見にワクワクしています。
63歳で自転車に再挑戦できたのは、母からのプレゼントのように感じてします。

『健康に過ごしてね』と母の願いを感じます。お母さんありがとう。

平成28年5月〈学参デザイン・組版・イラストのクリエイター〉
有限会社ジェット 廣田 久美子

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